物を使用しない無塩せき食肉加工品プランドとして着 実に売り上げを伸ばしてきたが , 近年は鈍化傾向にあ 自社の販売総額に占めるグリーンマークのシェアは , およそ 40 % 。鈍化の要因としては , ューザーの高齢 化に伴う自然減少の影響が想起されたが , それは近い 将来における確実な先細りが予測されることにもつな がる恐れもある。 こうした危機感から , 商品開発を統括する営業推進 部企画販促課およひ商品開発室では , 製品の質的な向 上を図ってきた。具体的には製品に含まれる脂質の含 有を抑えたり , 肉本来の風味から旨みを引き出す , あ るいは味付けと食感をよりマイルドにしたりといった 品質性の改良である。 グリーンマークプランドのユーザー特性としては , 化学合成添加物を使用しない食品という切り口によっ て指名購入の比率がやや高い。製品の質的な改良はこ うしたヘビーユーザー層には浸透しやすいが , 新規 ユーザーの取り込み対策としてはインパクトが弱い。 リピート商品を強化するためには , 質的な改良より は , むしろ機能性といった付加価値の付与や , 新規 ューザー獲得のためのトリガー的役割を果たす新製品 開発などが求められるからだ。 ( 3 ) リピートブランドの再構築を阻む限界と要因 同社営業推進部の部長である堀川善弘氏は , こうし たトリガー的な新規ューザー開拓に向けた新商品開発 を視野に入れていたが , 同時に現状においての企画・ 開発スタッフに対する限界も感じていた。 限界を感じさせる最大の要因は , 企画・開発スタッ フとユーザーとの距離感の遊離にあった。グリーン マークの購買意思決定者は , 女性主婦層であるにもか かわらす , 男性中心で構成されるスタッフ陣は , そう した層へのヒアリングやリサーチといった行為にあま り前向きとは思えなかったからだ。 ューザーとの遊離感によって生じる齟齬は , すなわ ちユーザーに関する情報不足をも生じさせる。企画開 企業診断 2016 / 3 つまり , 問題を解決するために , すでに使われた手 た振り返りの姿勢を強く作用させる。 性や新しいモノ・コトを志向するよりは , 過去に向け 発部署にとっての情報不足とは , 必然的に会社の将来 法を利用してしまう傾向が顕著となりやすくなるので ある。製品の質的な改良などは , まさにこのケースに 当てはまると言えるだろう。 もちろん , こうした質的な改良という開発行為自体 は間違ってはいないが , それだけではリピートを補強 させるためのトリガーとはなり得ないのである。 2 . 発想力を生み出すための組織デザイ ン手法 ( 1 ) 女性スタッフの編成とエデュケーション こうした限界を打破するために , 堀川氏は思い切っ たスタッフ編成の改革を実施した。企画・開発に関連 する 11 名のスタッフのうち , 7 名を女性スタッフで 再編成させたのである。 女性スタッフを拡充させた理由は , 子育て主婦層を 中心としたコアユーザーとの距離感を深める目的もあ ったが , 今後の戦略として学校給食などの業務用市場 への参入の狙いもあった。学校給食の材料購入担当者 でもある学校栄養士の大半が女性で占められているか とはいえ , スタッフを女性に入れ替えただけで , 即 効性のある発想がいきなり次々と生まれるわけではな い。そこで , 堀川氏は , さまざまな教育と啓蒙の場を 彼女たちに与えることにした。 まずは , ビジネス感覚と流通現場の環境を体感させ るために , 展示会などのイベントにスタッフを参加さ せた。したたかとも言える流通側バイヤーたちの現場 の声をリスニングすることで , スタッフが流通店舗に おける自社製品のポジショニングを認識することにも つながると思われたからだ。いわば , 自分たちの製品 の実売環境という現実を客観的な視点から見ることも 必要なのである。 次は , ユーザーとの接触を持たせることだが , ではあえて彼女たちスタッフを , 販促用のマネキンと して流通店頭に派遣させるという思い切った手段をと った。ユーザーの意見や感想を求めるという手法では , グループインタビューや街頭・店舗でのヒアリングや モニター調査といったものが一般的ではあるが , したリサーチは恣意的に集められたユーザーの心理が 余所行きに働きやすい。良い顔をしてしまうからだ。 したがって , 必ずしもユーザー自身が気づかないか 83
地方中堅企業の実践的成長戦略【前編】 はじめに : 事例から成長戦略を考える 成長戦略をイノベーションと理解する傾向はまだ根 強い。だが , 成長戦略とは , 顧客と製品の新たな革新 を創出する華々しい破壊的イノベーションを必ずしも 意味するものではない。むしろ地味ではあるが , 社員 の発想力を活かし , それらを具現化させるためのマネ ジメントを行っていくことが成長の原動力となるので はないか。成長戦略とは , そうした原動力をどうやっ て活かすかというデザインカにかかっているのである。 そこで , この項では , 長野県上田市にある信州ハム 株式会社 ( 従業員数 409 人 , 売上高 152 億円 : いすれ も 2015 年 6 月期 ) の商品開発事例を通して , そのデ ザインカの手法を学んでいきたい。 1 . リピートとドカンという視点 ( 1 ) リピートとドカンとは ? リピートとドカンとは , 特に BtoC 企業における主 カ標準商品と限定販売商品との差異を指す意味的な語 である。リピート商品は , 日々一定の数量で販売が予 測できるレギュラー商品のことを意味する。それに対 してドカン商品とは , 季節や地域の特性 , あるいは何 らかの外的要因に影響されて限定的に販売される商品 カ対象となる。必然的にリピートとドカンは , それぞ れ補完し合うことで企業の成長を促すことができる。 また同時に , リピートとドカンの領域を曖昧にする ことは避けなければならない。リピートは「広く ( 大 リピートとドカンの再構築 信州ハムの開発系人材活用術 青山忠靖 有限会社アーベインクルー代表取締役 / 中小企業診断士 きな市場で ) , 深く ( ユーザーに深く浸透する ) , 長期 的に ( 長い商品サイクル ) 」という普遍性に富んだも のとなる。ドカンは「広く ( 大きな市場で ) , 鋭く ( ューザーに鋭く浸透する ) , 短期的に ( 短い商品サ イクル ) 」 , あるいは「狭く ( 狙い絞った市場で ) , 深 く鋭く ( ユーザーに深く鋭く浸透する ) , 長期的に ( 長い商品サイクル ) 」といった , いすれかの定義に 属することが求められる。 1947 年に設立した信州ハムのリピート商品群は , 「グリーンマーク」 , 「爽やか信ナ日軽井沢」 , 「軽井沢」 といった 3 つの主要プランドで構成されている。 のうち , グリーンマークプランドの各商品は , 化学合 成添加物を一切使用しない無塩せきの自然食肉加工品 ( ハム・ソーセージ・べーコンなど ) として 40 年に わたる実績を誇っている。 一方 , ドカンの商品としては , 軽井沢という地域 ネームバリューを活かした「軽井沢工房」というプラ ンドの下に , 製品とドイツ風のカフェレストランを軽 井沢で展開しているのが現状である。いわば , 「狭く , 深く鋭く , 長期的に」の鉄則に従っている。その他の ドカン狙いの商品としては , 贈答用の季節商品を狙っ た「つるし燻りべーコン」という話題性のある逸品も 控えている。 ( 2 ) 主力リピートブランドの再構築イヒ 1975 年に信州ハムが発売を開始したグリーンマーク シリーズは , 化学調味料や着色料などの化学合成添加 企業診断 2016 / 3
行動に移すだけで勉強モードに切り替えられるも っとも基本的な方法です。 企業診断 2016 / 3 上にその問題のページを開き , ノートも開いた状 していました。翌朝一番に解く問題を決め , 机の 問題を解けるよう , 前日の寝る前に完璧に準備を 私は受験生時代 , 朝起きてすぐに財務・会計の る環境を準備しておくこともお勧めです。 勉強しようと思ったときに , ただちに始められ 事前準備を完璧にしておく ります。 残るため , やる気スイッチを入れるトリガーとな くのです。その結果 , 自分の頑張りが記録として このように , 勉強した痕跡を意図的に残してい た問題には , 大きくチェックマークを入れる 付を入れる。「二度と解かなくて良い」と判断し を入れる。テキストの目次の読み終えた項目に日 解けたら「〇」 , 解けなかったら「 x 」などの記号 たとえば , 問題集の解き終えた問題番号の横に も有効です。 学習の実績を目で見てわかるようにしておくこと また , 自分を奮い立たせるために , これまでの これまでにやったことを可視化する る」という行動にも移しやすくなります。 立ちはだかる壁が低くなり , 先ほどの「まず始め です。このように細分化することで , 自分の前に 「テキストを 1 ページだけ読もう」といった具合 まいましよう。「まずは , 10 分間だけ集中しよう」 , そんなときは , タスクも時間も細切れにしてし 途方もないポリュームに感じるものです。 った目標設定をすると , やる気の出ないときには とか , 「今日はテキストを 20 ページ読もう」とい 勉強を始める前に , 「いまから 2 時間やろう」 法です。 次に , 自分の中の勉強へのハードルを下げる方 タスクと時間を細分化する 態に。さらに , 筆記用具や電卓などもすべて出し つばなしにしておくのです。ここまで準備をして おけば , 起きてすぐに机に向かいさえすれば , 勉 強を始めることができます。 自分にとっての「勉強の聖地」を作る たとえ気持ちが乗らなくても , 周りの雰囲気に 触発されて , 「仕方がない。やってみるか ! 」と いう気持ちになることってありますよね。 私にとっては , TAC の自習室がまさにそんな 場所でした。診断士講座のみならず , 会計士や税 理士講座の受講生が何冊ものテキストや問題集を 持ち込み , ひたすら電卓をたたいている姿を見る と , やはり刺激を受けます。中には , 「寝るため に来たの ? 」と突っ込みたくなるほど寝てばかり の人もいましたが ( 笑 ) , それこそ「人のふり見 てわがふり直せ」です。私の場合は , かえって危 機感すら生まれました。 ほかにも , 近所にはお気に入りのカフェやファ ミレスがいくつかあり , そこに行けば必す勉強を している人に出会えました。他人のひたむきに頑 張る姿を見て , 「自分もこうしてはいられない」 と行動に移すことができたこれらの場所は , まさ に私にとっての「勉強の聖地」でした。 カウントダウンをする 漠然と試験日を目指して勉強をしていると , 多 くの時間が残されているような気がして , つい怠 けてしまいたくなります。 そこで , 「 1 次試験まであと〇日」などと手帳 などに記録し , 試験日がじりじりと迫ってくるこ とを実感できるようにするの やるスチ です。日単位 , 週単位 , 月単 位で , 自分の学習ペースに合 ったカウントダウンをしなが ら , 逆算思考で行動に移せる ようにしましよう。